2023年 コープあいち通信8月号
5/6

近ちかもと本 聡さとこ子さん 愛知学泉大学家政学部教授専門分野は、社会学、家族論、子育て支援論。2022年6月よりコープあいち有識者理事。有識者理事とは学識者や弁護士、会計士などの専門家として、社会的な.視野からの意見を生協の運営に反映させ、生協の日常的な業務執行の状況についても専門家の立場から監督します。戦後団塊世代を中心に作られた夫婦と子どもからなる家族を近代家族といいます。団塊世代の結婚率は95%で、現在は近代家族を脱していく方向です。産業の近代化で男性が働き手となり、女性が育児家事を行う性別役割分業が全世界で見られました。日本は、高度経済成長で産業構造が激変し、農村人口が7割以上から今は1%です。地域コミュニティが縮小、公私は区別され、今希求されているのは居場所づくりです。コロナの影響で女性の負担が増えましたが、一方で男性の家事参加もやや増えました。全国の生協組合員を年齢別で見ると30代は1割を切ります。1994年の調査では20代が7%でしたが、2021年は1.7%です。未婚化で、安全・安心なものを食べるニーズが減りました。生協の歴史的課題は単身者に購入されやすいしくみと商品がないことです。今は出生数が危機的で女性の人口が減り、無子化社会到来が早まっていると予測します。近年男性の育休取得率は初の1割超えと変化も見えますが、ジェンダー平等は世界の100位以下です。女性就業率が上昇し、1-2歳の子どもの半分は保育所に入っています。働く男女のための福利厚生の視点から職場配送ができれば、夕飯の調達など生協にニーズが戻る可能性があります。2女性の「あったらいいな」が日本には本当にないよねと言われます。問題ではなく課題として捉えて解決していくのが社会のしくみです。例えば昔は不良少年を問題児と言いましたが、問題ではなく本人が困っているという視点で支援をします。社会学・福祉学では問題のある家族とは言いません。問題をあげつらうよりも、その人をどのようにサポートしていくかという視点が普及しつつあります。高齢化社会の1つのマイナスは昔の規範で人を見てしまうことです。みんな希望があるので、叶える方向でいけるとよいねというのが「あったらいいな」でよく聞かれる声です。2018年の生協のパート職員への調査では、夫との関係で喧嘩したくないなど我慢する様子や子育てをやってと言えない状況がありました。そのような中では、自宅まで届く食品の宅配普及は利用者にとってはよかったといえます。子育て世代は、ストレスのなさや安心感が好きといえます。スマホやタブレットは体の一部となっています。大学ではスマホで出席を取っていますが、スマホを忘れたという人は、200人のクラスで1年に1回くらいです。ただし、パソコンは馴染みが薄くキータッチができないとか、長文を書くのが苦手ということもあります。お金で買えるのなら買うけれどもコスパが重要だといいます。買えないという場合も多いので、払った分に対してどれくらいのメリットがあるかというコスパ競争になっています。若年層の賃金はそれほど伸びていませんが、これについてはおとなしくて何も言いません。おかしいと言わずに閉じこもる傾向も見られます。企業の男女平等参画は達成できておらず、生活を楽しみながら働きやすい職場文化もまだ形成されていません。4Z世代は1990年半ば~2010年代初頭生まれと言われますが、マスメディアなどでは世代論が盛んです。世代で違いが起こるのはなぜか。時代の流れが早くなればなるほど違いが大きくなります。育つときの環境が激変し発達プロセスに違いがでていきます。Z世代の特色としては、デジタルネイティブと言われます。生まれたときからパソコンやスマホをいじっています。Z世代の“あったらいいな”と今の30代では違うものになります。脳の中にチップを入れておいて(BMIシステム)今日食べたいものを生協に送信すると今日の夜に配達してくれる、これがあったらいいなと思う人が多数派になるかもしれません。最後に、こういったデータを見たときに、世代や個人すべてに当てはまるのではなく、私は違うという意見も広く収集することも重要です。コロナ禍における子育て世代の変化 生活環境や生活意識子育て世代がもつ「あったらいいな」若年層・子育て世代のニーズミレニアル世代やZ世代の 意識や消費動向135有識者理事から学ぶ専門分野から2030年のビジョンを踏まえて、コープに期待することや情報をご提言いただきます。「子育て世代と組合員の変化」データに基づくということを私は推奨しています。身の回りの生活のことをデータ化すると見えることも結構多くあります。自分とは異なる世代のトレンドや社会の方向性が少し見えてきますので、さらに全体を見た動きも意識することが大切です。

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る