2023年 コープあいち通信9月号
4/6

12344可かち知 祐ゆういちろう一郎さん 魅力ある地域づくり研究所.代表愛知県食育推進課長、農業総合試験場副場長、農林水産部技監、公益財団法人.愛知県農業振興基金理事長を歴任。2020年6月よりコープあいち有識者理事。有識者理事とは学識者や弁護士、会計士などの専門家として、社会的な.視野からの意見を生協の運営に反映させ、生協の日常的な業務執行の状況についても専門家の立場から監督します。2019年の全国の農地面積は440万ha(ヘクタール)です。耕作放棄地の発生防止・解消にかかわる施策などを講じて2030年に414万haを見込んでいます。それでは、この農地面積でどの程度食料を自給できるのか、3つのパターンを示します。①国内生産+輸入による現在の食生活を維持するとして45%(現在は38%)をめざします。②国内生産のみによる米・小麦中心の作付けでは、推定エネルギー必要量を2割ほど下回ります。③国内生産のみによる、いも類中心の作付けでは、ほぼ推定エネルギー量を確保できます。作付体系では、本州の水田の半分、畑地の夏作のほぼすべてでサツマイモを栽培します。北海道の水田の半分、畑地ではジャガイモを栽培します。食生活では、朝食に焼きいも2本、昼食に焼きいも2本と粉吹きいも1皿、夕食に粉吹きいも1皿。パンは朝食に8枚切り半切れ、ごはんは夕食に茶碗1杯です。お腹はいっぱいになるけれど、「いもばかりは厳しいな」との声が多いでしょう。現実的には、①のパターンで、できるだけ早期に食料自給率45%達成をめざすことになると考えます。食料自給率を1%上げるためには、米は1.05倍、小麦は1.44倍、大豆は2.2倍の生産が必要です。飼料自給率(25%)が低いため、畜産物の自給率は15%ですが、飼料自給率を反映しない「食料国産率」では62%になり、総合食料自給率も46%になります。飼料自給率を上げることは大変重要なポイントで、計画では34%をめざすとしています。食生活では、スパゲッティまたはパン食を10日に1食だけごはんに変えることで達成できます。国では、望ましい農業構造の姿(2030年)として、担い手とその他の農業経営体(中小規模の経営体、地域農業に貢献する半農半Xなど)が連携協働して地域を支える姿を描いています。農業就業者は2015年に208万人(うち49歳以下35万人)いました。すう勢では2030年に131万人(うち49歳以下28万人)に減少すると予測されますが、新規就農者の受け皿として法人化をすすめるなどして140万人(うち49歳以下37万人)を確保していくとしています。2021年には、農家からの新規就農者のシェアが39%にまで落ち込み、非農家から法人などに雇用されることにより農業に従事した者のシェアが上回りました。非農家からの新規就農者の受け皿となる法人育成の重要性が増しています。農業生産の基盤となるのが農村コミュニティです。担い手の確保も農地利用の最適化も魅力ある地域づくりの上に成り立つと考えます。標高350~500mの中山間地に位置する豊田市押井町では、栽培経費(再生産価格として算出した1俵3万円)を負担する「米の自給家族」方式を提唱し、募集しています。現在100家族が150俵を契約し、押井の里の家族と新しい家族が一つの家族となって、自分たちが食べる安全でおいしいお米を自給する取り組みを展開しています。再生産価格で買い支える仕組みが築かれています。農地の見通しと確保農業構造の展望(担い手、農業労働力)魅力ある地域づくりコープあいちへの期待 (私たちのミッション)①食料安全保障、国土保全の観点から、農業に対する消費者の理解を深めることが重要です。日本農業の現状と課題を踏まえ、生産者を支援する視点を持ちましょう。②肥料、飼料、段ボール、燃油など生産資材高騰による生産コスト高を価格に転嫁しにくい状況の中、再生産価格で買い支える取り組みを率先してすすめましょう。③生産者、食品製造事業者と連携し、三方よし(組合員、生産者・メーカー、コープあいち)の商品開発を強化しましょう。有識者理事から学ぶ専門分野から2030年のビジョンを踏まえて、コープに期待することや情報をご提言いただきます。「日本農業の将来を考える視点と 私たちのミッション」日本の農業政策は、1999年に制定された「食料・農業・農村基本法」に基づいてすすめられています。制定から20年以上経過し、状況も大きく変わってきたことから、国は、来年1月の通常国会での基本法改正に向けた検証作業に着手しています。今回は、2030年度目標の食料・農業・農村基本計画により、農地、担い手・農業労働力、地域づくりなどの観点から日本農業の将来を考え、結びにコープあいちへの期待を述べます。

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る