2023年 コープあいち通信10月号
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3会社にとって利益は必要ですが、目的ではありません。目的は顧客のニーズを見つけ出し満足を与え続けることです。それには顧客(ファンになってくれる人)のニーズを聞く力が鍵です。小売業では、作られたものを売るのではなく消費者の代理として自ら作る購買代理の動きがあります。製造業では、「後工程はお客さま」といって品質の工程管理を重視しています。消費者、製品の最も近くという意味で現地・現物が大事です。目標、目的、手段は混同しがちです。会社では売上・利益論争がよくありますが、どちらも目標であって手段です。手段の目的化に気を付けたいところです。「なぜ5」は品質の向上に役立ちますが、なぜを5回繰り返すと、目的は何かを見つけることにも有効です。4イノベーションの大本命はDX、GXですが、そもそもイノベーションは新しい発想、方法、商品、サービスで既存の事柄に変化を起こすことです。イノベーションにも天・地・人があり、まずは天のときです。今年の日本国際賞は、今の高速・大容量ネット社会を支えているエルビウム添加光ファイバー増幅器の開発で中沢氏と萩本氏に決定しました。両氏は運がよかったとコメントされていますが、エルビウム添加光ファイバーは化学で、レーザー装置は機械工学です。ご努力と異分野の出会いの中で生まれたといえます。地の利として、ミクロのリスク管理があります。成功は1000に3つ、失敗が997といわれ、安心して失敗できる構造を作ることが必要です。それを担保するのが分散とリミット管理です。失敗できる環境はイノベーションを起こす土壌となります。最後に人の輪です。どうあるべきとどうありたいは、似ているようで違います。私たちはどうあるべきは、あなたたちはどうあるべきに転換しやすいものですが、私たちはどうありたいは転換しません。あなたたちはどうありたいは、変ですよね。企業では自分事になっているかを大切にします。コミュニケーションは難しいものです。違いは違いとして、それでもめざす目的、志を互いに思うことではないかと思っています。1新型コロナウイルス、ロシアの侵攻、物価高とピンチが重なっています。物価高といえば1974年の狂乱物価が思い起こされますが、前年の第四次中東戦争に端を発した消費者物価上昇は対前年比23%にもなりました。誰もが原因は原油高と思いましたが、日銀による貨幣の供給過剰が原因です。当時は為替が変動相場への移行期で円高不況ともいわれ、日銀は大量のお金を市中に供給しました。昨秋、外為相場は1ドル151円と23年ぶりの円安を記録しました。円安による物価高騰を抑える為、政府はドル売り介入し、日銀のイールドカーブコントロールの調整(長期金利の変動幅拡大)により目下円安に歯止めが掛かっています。今後の長期金利は為替や米国金利などがあり予測できませんが、過去を見ると10年国債の金利は右肩下がりで利払いが減る居心地のよい状態でした。逓減していただけに、一度金利が反転すると負担は倍加します。ピンチはチャンスです。ピンチは隠れていたニーズ、新たなニーズを発見するチャンスですが、居心地のよい中に本当のピンチが潜んでいます。順調なときは変化が難しい、居心地が変わり、失敗のリスクもあります。それでも今は変化にチャレンジし、顧客ニーズ、社会の変化を捉える時代です。2チャレンジは三つの視点が大切です。コンプライアンス、リスク管理、狭義のマネジメントでこの順番が大事です。チャレンジは失敗しますが、コンプライアンスを守らないと退場となります。コンプライアンスのピンチは「これで法令上は遵守できた」と思ったその瞬間です。そのとき、どうありたいかを問うと組織風土、コンプライアンスの土台となります。リスク管理は企業の目的と一体です。リスク管理があるのでチャレンジでき、チャレンジができるから変化できます。生協の最大の目的であり財産は組合員です。組合員情報の管理こそ最も重要なリスク管理です。これらを土台に狭義のマネジメント(顧客創造とイノベーション)にチャレンジします。水す貝がい 福ふく夫お3中京銀行常務取締役、中京カード代表取締役社長・参与等を歴任。2020年6月よりコープあいち有識者理事。有識者理事とは学識者や弁護士、会計士などの専門家として、社会的な 視野からの意見を生協の運営に反映させ、生協の日常的な業務執行の状況についても専門家の立場から監督します。さん タイトルは企業の見方Ⅱです。2021年に掲載の内容を今日的に見直しています。前回お聞きになった方は振り返りながら、はじめての方は気軽にお読みください。ピンチはチャンスチャレンジは、三つの視点顧客の創造イノベーション有識者理事から学ぶ専門分野から2030年のビジョンを踏まえて、コープに期待することや情報をご提言いただきます。企業の見方Ⅱ

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