2024年 コープあいち通信5・6月号
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513私は若いころ、商品開発をしていました。事例をいくつか挙げましたが、成功は一件もなくすべて失敗です。おかげで失敗のコツをつかむまでになります。三点紹介します。一点目は、自分の経験に従いがちということです。とかく人は自らの体験を重視しがちですが、思い入れが強いと真の顧客ニーズに気付けません。二点目は、新しい技術に憧れないということです。新技術は、目立ち、派手であって、重要でもありますが、信頼性が必ずしも高くありません。むしろ日常における思いがけない成功や失敗を平凡で目立たない分析を重ねることで確実性が高まります。なぜなら、それが自らの強みに気付く契機になるからです。三点目は、新しい機能を加えないということです。差し引く勇気を持つことです。どんな新しい機能も手段です。手段に目を奪われると目的を見失いかねません。目的は唯一、顧客の満足にあります。ドラッカーは①ニーズは明確か②現在の科学技術で手に入るか③使い方や価値観に一致しているか、が顧客の創造につながるとしています。4イノベーションは技術革新と思われがちですが、これまでにない組み合わせで、既存の事柄に変化を起こし、新たな価値を創造することです。新技術ではなく、既存の技術の組み合わせです。組み合わせを発見する武器が現地現物と“なぜ5”です。顧客ニーズに最も近づくことができるからです。組み合わせに気付かせてくれるのは出会いです。出会いは視野を広げてくれます。イノベーションへの近道です。企業の見方Ⅰ、Ⅱ、Ⅲは出会いがテーマでした。新たな出会い、思いがけない出会いはイノベーションを生み出すことがよくあります。また、出会いは、目的でも手段でもなく、出会えてよかったと思う心です。イノベーションもまた、目的でも手段でもなく、顧客の満足こそ、イノベーションそのものといえます。水す貝がい 福ふく夫おチャンスをつかむマネジメント三回にわたった企業の見方の第一回はコロナ禍の2021年で、人々は誰もが「ピンチはチャンス」と言いました。どう変わるか分からないが社会が大きく変わる、チャンスが生まれるというものです。第二回2023年も「ピンチはチャンス」で、チャンスが見えてきました。ロシアの侵攻による物価高は、デフレ経済からの脱却を示していました。一方、「ピンチがチャンス」であるなら「本当のピンチ」は何か。居心地のよい時代は次のピンチを内在しています。変わらないことが、本当のピンチです。ところでデフレとは何か。バブル崩壊以降、長く続いた需要不足は、モノ余り(欲しいモノがない)を通して物の価値が下がります。一方、企業は生き残りを図り、コスト削減で物価下落に備えます。個々の企業の防衛策が、社会全体では一層の需要減少になり、更なる物価下落のサイクルを生みます。これがデフレです。価格は上がらないを変えようとしたのが金融緩和です。短期のマイナス金利適用と国債の大量買入れでデフレ脱却を図りました。2022年4月からコアCPIが2%を上回っています。資源価格高騰を起点とした物価上昇は円安も相まってデフレでない時代に入っています。一方、今の円安は日米金利差を主因としたコストプッシュ型インフレにつながりかねません。3月にも金融緩和の出口をめざしそうです。輸入物価による上昇を第一の力、賃金上昇を第二の力といいますが、今春は賃金上昇による物価上昇が実現しそうです。しかし、そのうち頭打ちになると見ています。企業業績への影響からです。第三の力が必要になります。これまでは、よいものでもお値打ちが前提でした。今回は、多少高くともよいものならに変わるかもしれません。これがチャンスです。よいものというのが顧客ニーズです。賃金の価格転嫁だけでは必ず行き詰まります。顧客ニーズを捉えることがチャンスをつかむということです。2マネジメントは、ドラッカーが創出したものです。彼は、その本質を顧客の創造とイノベーションだと言っていますが、コンプライアンスとリスク管理が大前提です。コンプライアンスには、自分のためと思っているものと自分のためと思っていないものがあり、後者は厄介です。前回、べき論・たい論の話をしました。べき論は、あなたたちは〇〇すべきに転換します。これが、自分の利益ではない、自分のためではない、私のせいではない、につながります。過大な目標に、べき論とみんなでがんばろうが入ると逃げられなくなります。がんばらない仕組みが大切です。第二の前提はリスク管理です。WBCでの大谷選手の言葉に「…一番最悪のシナリオを想定し、リスクを回避する…」があります。能登半島は大変です。一日も早い復旧、復興を願わずにはいられません。巨大地震への備えは言うまでもありません。しかし、一番最悪のシナリオとは何でしょう。巨大地震は自然災害です。サイバーリスクは責任を問われる最悪のシナリオです。コープにとっての最大の資産、組合員情報こそが最終資産です。中京銀行常務取締役、中京カード代表取締役社長・参与等を歴任。2020年6月よりコープあいち有識者理事。有識者理事とは学識者や弁護士、会計士などの専門家として、社会的な 視野からの意見を生協の運営に反映させ、生協の日常的な業務執行の状況についても専門家の立場から監督します。顧客の創造イノベーションさん 昨年は「観る将」が流行語となり、藤井八冠の快挙をみんなで楽しみました。誰もがTVの前で、AIの評価に一喜一憂しました。将棋AIのおかげです。AIの技術革新は、8年前、囲碁の世界チャンピオンに完勝したことで確立しましたが、昨年はAIが実に多くの観戦者を増やしました。これが顧客の創造です。有識者理事から学ぶ専門分野から2030年のビジョンを踏まえて、コープに期待することや情報をご提言いただきます。企業の見方Ⅲ

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