2024年 コープあいち通信7月号
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12347戸となり成 司しろう朗さん 一般社団法人中部SDGs推進センター 代表理事(株)西友副社長、住友理工(株)CSR部長、アドバイザー担当、特定非営利活動法人中部プロボノセンター共同代表理事等を歴任。2022年6月よりコープあいち有識者理事。有識者理事とは学識者や弁護士、会計士などの専門家として、社会的な 視野からの意見を生協の運営に反映させ、生協の日常的な業務執行の状況についても専門家の立場から監督します。人的資本への投資を怠った20年が 企業の劣化にこの20年間で一人当たりGDP(国内総生産)は世界2位から27位まで落ち、もはや日本は先進国ではないといえます。競争力ランキングは34位、年収は2000年の世界2位から22位まで落ちました。バブル崩壊、リーマンショックを機に企業は人材開発費や人件費を削減し、政府は会社を助けて人材は置き去りでした。本来は日本全体で知的資本や人的資本の投資で産業構造の転換を図るべきでした。フィンランドの携帯会社ノキア危機のとき、政府と地元市による失業者への生活保障とリスキリング(学び直し)による技術習得支援が再就職につながりました。ノキアは自力で再生しました。日本政府は公的職業訓練や公的支援をどれくらいしているでしょうか。デンマークはGDPの2%を使っていますが、日本は0.17%です。また、この20年、日本だけ賃金が下がっている状況です。人的資本の強化をどう評価するのか人に投資して企業価値をどう上げるのか。賃金は働く時間ではなく、生み出す価値への発想の転換が必要です。生み出した価値に対して使った労働時間で割ると、付加価値労働生産性が出ます。付加価値労働生産性を上げる方法は、効率を上げることと価値創造することです。日本の工場現場の生産性は上がっていますが、サービス業の生産性が低いことが課題です。日本が安さを求める価格競争で疲弊する中で、欧米は付加価値の高い商品・サービスに移行しました。付加価値の高い企業に移行するためには、自分で考えられる人材の育成が大切です。人口減少の日本では人材の獲得競争に入り、労働者から選ばれない会社は人手不足で倒産します。今や人材は最も重要な資本ということです。人的資本を強化し 付加価値労働生産性を上げるには人的資本の強化はデジタル化による業務作業効率の改善とスピードある組織運営、社員のスキル、知識、能力、モチベーションを上げる視点が必要です。自ら能動的に考え行動し、多様な人材が相乗効果を発揮する組織風土にすること、心豊かな生活水準を維持する報酬も必要です。業務の明確化とチームの成果を求める日本型ジョブ型雇用の導入も必須です。この仕事に必要なスキルや知識は何かを社員に公開し、社員情報をデータ化します。チームリーダーはビジョンを明示し、メンバーをサポートできる人です。評価は上司・部下・同僚の360度評価で、個人とチームの両方で評価します。健康・安全は働き方に柔軟性を持つことです。地域に出て社会や人々の行動の変化に気付かなければ革新的な発想は生まれません。結びにあたりコープあいちは、柱である宅配事業の付加価値労働生産性の向上が必須です。宅配事業の成長のためデジタルによる組合員の受発注システムをどうするのか、特に物流センターのデジタル化による作業効率改革は喫緊の課題です。人事制度改革による知的労働生産性の向上、創造力のある人材育成、スキル・能力に合った報酬制度をどうするのか。人的資本の強化はわが社の価値創造ストーリーに心から共感・納得して働くことにあります。そのためトップメッセージが重要で、自分の仕事が社会の健全な成長・発展に貢献していることを社員が実感することです。未来への大きなストーリーと、一つひとつの達成感を味わうことが大切です。変革を怠るものに未来はない、今こそ原点、今こそ未来です。有識者理事から学ぶ専門分野から2030年のビジョンを踏まえて、コープに期待することや情報をご提言いただきます。持続可能な企業に向けての人的資本の強化戦略~強靭でイノベイティブな組織づくり~企業価値の評価は近年「無形資産」4つの資本といわれます。知的資本、人的資本、自然資本、社会関係資本の中で、人的資本の強化が日本の企業の最大の課題といわれています。

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