コープあいち通信11・12月号
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中なか山やま弦げん2006年弁護士登録(愛知県弁護士会所属)名古屋第一法律事務所所属2020年6月よりコープあいち有識者理事コープあいちでは、2025年1月にカスタマーハラスメントに対する基本方針を策定しました。有識者理事とは学識者や弁護士、会計士などの専門家として、社会的な 視野からの意見を生協の運営に反映させ、生協の日常的な業務執行の状況についても専門家の立場から監督します。さん 題だと思います。厚生労働省が定めた「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」としています。「求めている内容の妥当性」と「手段・態様の妥当性」の両面から総合的に検討する必要があります。4「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、企業がとるべき対策として7つの項目が示されました。①基本方針、基本姿勢の明確化、②従業員のための相談対応体制の整備、③対応方法、手段の策定、④従業員等への教育、研修、⑤事実関係の正確な確認と事案への対応、⑥従業員への配慮の措置、⑦再発防止のための取り組み、です。生協の場合は、顧客は生協を構成する組合員であり、それは組織内の問題という難しい側面もありますが、反対に生協の対等平等、相互尊重といった理念からは呼び掛けやすい関係性にあるとも言えます。立法の意味合いカスハラ対策の法制化が急速にすすんでいます。ベースには人権尊重のために企業が主体的に役割を果たすべき、という考えがあることを押さえる必要があります。使用者が負っている安全配慮義務を具体化するもの消費者基本法等の規定合わせて持っていたいのが消費者の権利という視点です。「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」では、正当な苦情は改善やサービスに反映されるもので不当に阻害されてはいけない、消費者の安全が確保され必要な情報や教育の機会が提供されるのは消費者の権利である、としています。正当なクレームが不当に制約されることのないようにする必要があります。また、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮を求めることができる障がい者の権利や、表現の自由との関係も意識しておく必要があります。7対等・相互尊重終わりに組織ではうまくいかなかったとき、気軽に報告できることが大事です。カスハラそのものというより、共有したり、支え合う風土かどうかが、働く人に決定的に重要になります。トラブルを起こさないことが評価されるような組織だと、何とか自分で処理をしようと深みにはまってしまう。そうならない風土づくりが重要です。そして、誰もがカスハラを受ける側にも行う側にもなり得るという視点を忘れないでください。155過去の3回の掲載では「ビジネスと人権」を共通の切り口にしてきました。今回、コープあいちでもカスタマーハラスメントの指針が掲げられましたが、これは「ビジネスと人権」が問題となる場面の一つです。そこで、「カスハラ問題を考える」をテーマにお話ししたいと思います。と位置づけることができます。6「顧客等」と「働く人」とが「対等な立場にたって相互に尊重する」という関係がめざすところの核心です。顧客と働く人は、その場面における役割の違いであって、人として対等平等な関係にあります。何がカスハラなのかという問題も、この対等平等性、相互尊重という点に照らして考える必要があります。8ビジネスと人権に関する指導原則2011年に国連の人権理事会で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」は、事業活動が人権に与える影響を認識し、企業が責任を果たすべきことを強調しています。企業が事業活動を行う上での基本的なルールとなっています。2例えば、フジテレビ問題から見えること指導原則は企業が人権方針を定めることを求めています。今般、相当数の企業がCMを引き上げる対応をとりましたが、その根拠となっているのが各社の人権方針です。企業として何をめざすのかと結びついてこそ、社会的に理解を得られる行動となります。3カスタマーハラスメントの定義何がカスハラに当たるのか、これが現場では一番の問とるべき対策有識者理事から学ぶ専門分野から2030年のビジョンを踏まえて、コープに期待することや情報をご提言いただきます。カスハラ問題を考える

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