Fエース農園・長野県下伊那郡松川町
りんご・梨の生産者グループ、Fエース農園とのお付き合いは、1974年の二十世紀梨の取り扱いから始まりました。りんごは「安全な物を安心して食べたい」という組合員の希望をかなえるため、出荷する1カ月前に農薬の散布を取りやめたところ、病気や害虫に侵されてしまいました。そこで、それらに負けない取り組みが始まりました。
土づくりでは、丈夫な果樹を育てるために鶏フンや油かすなどの有機肥料を使っています。病気が発生しにくい環境づくりも大切で、草刈りは欠かせません。フェロモントラップを使い害虫の繁殖を抑えることで、農薬の使用量を減らしています。受粉にはミツバチを使います。ミツバチは農薬に弱いため、そのときは周囲の農家と協力し、地域全体で農薬の使用を減らしています。りんごや梨の作業は機械化が難しく、ほとんどが手作業で行われています。
産地は日当たりがよく、昼夜の温度差も大きく、水はけのよい土壌と、おいしく色付きのよいりんごができる自然条件がそろっています。しかし、果樹栽培の収穫は1年に1回だけです。天候や環境、病害虫で出来栄えと収穫量が左右されてしまいます。それでもこの栽培方法を続けているのは、半世紀近く続く組合員との交流で生まれた信頼があるから。農園の「オーナーの木」を中心に、組合員が現地を訪れ、収穫体験などを通して交流しています。「おいしくて安全・安心なりんごを届けたい」その思いは今も続いています。
◂摘果
なりはじめのりんごの状態を確認し、よい実に育つものを選んでそれ以外のものは手で摘み取る。
◂ふれあいカード
Fエース農園のりんごや梨に入っている生産者カード。感想を記入する欄も。
◂りんご・梨のオーナー企画(2004年)
「産地の自然・環境・人々」とふれ合い、さまざまな体験を通じて生産者との信頼を深めている。
生協の商品を栽培するのは、守らなければいけないことが多く大変ですが、当初からの「安全・安心でおいしい果物を届ける」という使命を持ち、常に新たな工夫と努力でがんばっています。Fエース農園のりんごや梨のファンが増えてくれたらいいな、そんな気持ちで作っています。果樹は1年に1回しか収穫できず失敗は許されません。栽培は自然が相手なので、台風や大雨、水不足と苦労が絶えませんが、人生でそう何回もできることではありません。だからこそ尊いものだと思っています。
以前からコープあいちと「オーナー企画」を行っています。天候や環境、病害虫に左右され、収穫するりんごすべてがきれいな物ばかりとは限りません。近年は生産者の数も減ってしまいました。農園に来て、ぜひそれらの現状やおいしいりんごを作るための努力・苦労を知ってもらいたいです。りんごや梨に同封している「ふれあいカード」に励ましやお礼の言葉をいただき、この言葉が私たちの力になっています。
■ りんごは皮付きのまま、砂糖はりんごの1/3の分量でOKです。一般的なレシピより砂糖が少ないので、冷蔵庫で保存して、早めに食べ切りましょう。
■ 品種は、「さんさ」「紅玉」がおすすめです。
焼く前に、りんご各所に穴をあけると火が通りやすいです。
りんごは収穫したてがおいしいので、すぐ食べることをおすすめしますが、保存する場合は家の涼しい所に置いてください。冷蔵庫の場合は野菜室で。 乾燥させないことが大切なので、袋に入れてください。長時間そのまま置いておくと水分が抜けてしまいます。梨も同じです。
ワックスのような成分の正体は、リノール酸とオレイン酸という不飽和脂肪酸の一種で、乾燥を防ぐためです。りんごの中から出たもので、人体には害がないので安心して丸かじりしてくださいね。
組合員、生産者・メーカー、生協と、工場見学や調理実習で多くの交流をしてきました。
さまざまな栄養価が含まれ、「医者いらず」といわれるりんご。イギリスにも同じことわざがあるそうです。
多汁でみずみずしく、爽やかな酸味とシャリッと硬めの果肉が特徴。
二十世紀梨 1.3kg(3〜5玉) ►
「蜜が入ってるよ」りんごの季節になるとよく耳にする、この言葉。他の果物では聞きませんよね。この「蜜」って、一体何もの?
光合成によって葉で作られたソルビトール(糖アルコール)は、果実の中に送り込まれ、酵素の働きによって甘さのもとになる「果糖」「しょ糖」「ブドウ糖」に変えられます。やがて果実の細胞内に糖が入りきらなくなると、ソルビトールは果糖やしょ糖へ変わることができなくなり、細胞と細胞の隙間にたまって水分を引き寄せます。これが「蜜」の正体です。
蜜そのものはあまり甘くないのですが、蜜が入ったりんごは甘み成分がたくさん含まれ、熟度がすすんだことを示しています。蜜は収穫後しばらく保存しておくと果肉に吸収されて見えなくなることがあります。また、りんごの種類によっては、蜜が入らないこともあります。
Fエース農園がある長野県下伊那郡松川町は、中央アルプスと南アルプスの間の大きな谷、「伊那谷」の真ん中にあります。長い日照時間と適度な寒暖差を生かし、果樹栽培の歴史は100年以上で、「くだものの里」として知られてきました。
りんごの他にも、梨・サクランボ・ブルーベリー・桃・ぶどう・すももなど、多くの果樹を栽培しています。
Fエース農園も、コープあいちの南水、二十世紀、幸水、洋ナシのラ・フランスを栽培しています。収穫後の追熟(収穫後、一定期間おいて成熟させること)で甘みが増してくるラ・フランスは食べごろを見極めるのが難しい果物。軸の周りを押してみて柔らかくなったら、それが食べごろです。
ちなみに、松川町の町の花は「梨の花」だそうですよ。
取材にFエース農園を訪れたのは6月末。摘果も終わり、青いりんごが大きくなり始めていました。矢沢さんからお話を聞く中で「自然を相手にしているので、天候に左右されることがあり、いくつもの困難を乗り越えなければならない」とお聞きしました。
果樹被害で多いのが「凍霜害」。春先、果樹の花が咲くころに低温になって霜が降りると低温障害を起こしてしまいます。りんごの場合、花が凍り、めしべが凍ってしまうと実がつかなくなってしまうそうです。また天候不順が続くと、色付きが悪くなったり、日持ちがしなくなるそうです。
みなさんのもとへ、おいしいりんごが届きますように。
今回、野菜ソムリエとして、レシピを提供してくださった生産者の松尾さん。果樹園の2代目です。松尾さんのお父さんは、同じく生産者の矢沢さんと一緒に、長くFエース農園を支えてきました。
昔は、出荷する1カ月前に農薬の散布を取りやめていたため、寄ってくる害虫のカメムシを駆除しなければいけませんでした。矢沢さんと松尾さんのお父さんは、早朝カメムシの動きが鈍いときに、梨の棚を揺すってカメムシを落とし、駆除していたそうです。広い果樹園で1本ずつ行うことは、それはそれは大変だったそうです。手作業での害虫駆除では間に合わず、
農薬を辞めることで病気にも侵されてしまうため、その後、Fエース農園のみなさんは、フェロモントラップを使って害虫の繁殖を抑えるなどして、農薬の使用量を減らすことに成功しました。
本誌に掲載した焼きりんごのレシピ。もちろんネーミングはレシピ考案者の松尾さんです。焼きりんごのレシピ名にABC? 実は、「A」はアーモンド、「B」はバター、「C」はシナモンだそうです。最後の「Cな林檎」を続けて読むと…しーなりんご…しいなりんご…椎名林檎?!
松尾さんいわく、「椎名林檎さんの音楽を聞きながら食べれば、さらにおいしいかも」とのこと。お試しあれ!