株式会社スギヨ・石川県七尾市
かに風味かまぼこが有名なスギヨですが、その始まりは江戸時代、漁師の網元からです。明治に入り鮮魚問屋を兼業し、1907年に近海で取れた稚魚を原料にちくわの生産を始めました。
1990年代後半、生協では生産者の廃業などでちくわの供給が難しくなり、新たな生産者に依頼する必要が出てきました。すでに生協オリジナルのおでんセットで取り引きがあり、ちくわの老舗であるスギヨに依頼することに。しかしスギヨの地元、北陸のちくわには、私たちの地域のちくわにある肉厚や甘みはありません。食べたことのない味の開発に、スギヨでは試作を重ねる苦労の連続でした。元の生産者にレシピの提供を依頼したり肉厚にする焼き方を教わるなどして、ようやく発売に至りました。
生協のちくわの主原料は無リンのすり身です。無リンとは、リン酸塩を加えていないことです。リン酸塩は、程よい弾力の食感を生み、保存性も高めます。無リンの場合は、より新鮮な原料を確保しなくてはなりません。しかも肉厚なので、串に巻くと身割れが起きたり固くなったりします。高い技術力で品温条件などをクリアし、素材の味が楽しめるちくわとなっています。
2019年、味や食感の見直しが始まりました。組合員はすり身について学習し、試作品で味や食感を確かめ、パッケージデザイン、パッケージ記載の文言などについても声を届けました。スギヨがその声を受け取り、2020年、基本コンセプトは変えず一層おいしく生まれ変わりました。
◂焼き工程
回転させながら焼き色がつくまで焼く。焼かれたちくわは膨らむ
◂串抜き工程
焼き色がついたちくわからステンレス製の串を抜く。その後冷却し、袋詰めする
◂商品の見直し
日本生協連と東海コープ※で商品の見直しに取り組む。コープみえの組合員が何度も試食を行い、検討
※ 東海コープ事業連合:東海三県の3つの生協と協同して事業や活動をすすめ、より価値の高い生協をつくり上げていく組織
ちくわの製造は、6割が生協や一般量販店、4割が外食産業用です。コロナ禍で生協の需要は120%でしたが、外食産業は60%まで落ち込みました。今は少しずつ戻ってきています。
魚の加工食品も、最近の原材料の値上げや原油価格の高騰による物流コストの上昇、ロシア・ウクライナ情勢からも、いろいろな影響を受けています。また、近年の原料事情も困難になっています。以前は1匹のスケソウダラはすべてすり身になっていましたが、海外でも食べられるようになったため、半分はフィレとなり海外へ流れ、日本には半分しか入ってこない状況です。
能登の豊かな山海の恵み、伝統文化、当地ならではの食文化がスギヨのものづくりの礎となっています。2007年には、新たな挑戦として農業事業にも参入しました。農産物と水産材料と組み合わせることで商品開発の幅をさらに広げ、同時に、担い手が少なくなりつつある地域農業の振興を図り、地域の活性化を考えての決断でした。伝統の食文化と先進加工技術・開発力を相乗させて生まれた、新しい「食」を世界へと供給し、その利益を地域へ還元する。そのような循環型の事業に努めています。
その中で、生協で盛んに行われる交流会はとても大切だと思っています。組合員の声には説得力があり、商品づくりに生かすことができます。みなさんの生の声を聞くのを楽しみにしています。
■ お好みで、きざみのりや青ねぎをのせてもOK
※画像はイメージです。スギヨの「ビタミンちくわ」を使用しています
※画像はイメージです。スギヨの「ビタミンちくわ」を使用しています
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ちくわを半分に切ることで、揚げ焼きで作ることができ、
サクッと仕上がります。
※画像はイメージです。スギヨの「ビタミンちくわ」を使用しています
■ 春雨は煮過ぎず、歯ごたえを残して仕上げるとグッド!
※画像はイメージです。スギヨの「ビタミンちくわ」を使用しています
主原料となるスケソウダラは漁獲後、洋上の漁船で、新鮮なうちにすり身にし、冷凍処理されます。そのため鮮度がよく、タンパク質の変性がすすんでおらず、弾力が強くなります。※ スケトウダラ(標準和名)と呼ぶこともあります
生協では、必要以上の添加物を使用せず商品を作っているので、ちくわも、リン酸塩を添加していないスケソウダラのすり身を使用しています。
組合員、生産者・メーカー、生協と、産地工場見学や学習会で多くの交流をしてきました。
チーズ、きゅうり、練り梅…みなさんなら何を入れますか?
スギヨが1972年、世界で初めて開発・販売した、かに風味かまぼこ。独特の風味と食感です。
水産練商品。加工品製造の老舗、スギヨのルーツは、江戸時代の加賀藩治世に、能登半島の七尾で網元として漁業を営んでいた杉野與作氏から始まります。1907年(明治40年)、初代・杉野作太郎氏がタラや近海で獲れた稚魚を原料に、初めてちくわの生産を始めました。
今回ウィズコープで取り上げた「CO・OP焼きちくわ」はもちろん、組合員のみなさんにおなじみの「かに風味かまぼこ(ツインサラダ)」、こちらもスギヨの主力商品です。サラダやお吸い物、茶わん蒸しやちらし寿司など、いろいろな料理に利用されている方も多いのではないでしょうか。
「カニカマ」と言われていますが、この商品、世界で初めてスギヨが発売されたとご存じでしたか?
50年前「かにあし」という商品名で発売され、大ヒットとなり、戦後の食品3大発明とまで言われています。
「どんな種類のかになのか」「かにのどの部位なのか」など、かまぼこのコンセプトに合わせて、かにの身らしく見えるよう、商品ごとに、さまざまなカッターを使用し、カットの角度や方法にもこだわっています。かにの風味を感じられるよう、オリジナルのレシピで作る、かにエキス(かにのうま味を取り出した調味料)をすり身に加え、さらにかにの身を配合することで、本物のかにのような味わいになるようにこだわっています。
ちなみに、戦後の食品3大発明の他の2つは、インスタントラーメンとレトルトパウチカレーだそうですよ。