コーミ株式会社・名古屋市東区
コーミはおいしさと安全・安心の観点から加工用トマトの契約栽培にこだわり続けてきました。愛知県内の加工用トマト生産量は、1989年に約2,500tありましたが、2019年には約250tに減ってしまいました。安価なトマトペーストの輸入、異常気象、生産者の高齢化・後継問題により、愛知県内契約栽培生産者も約50軒と著しく減少しています。
加工用トマトは栽培が難しく、高温や直射日光で品質が劣化してしまいます。トマトは順に熟すため一度に収穫できず、夏の最中、真っ赤に完熟したものだけを収穫していきます。生産者は
「愛知の加工用トマトの火を消してはいけない」と2006年「愛知県加工用トマト拡大協議会」が立ち上がりました。メーカー、JA、生産者、行政、生協などが参加しています。豊橋市の近郊農家と契約栽培をしていることから、コープあいちとは「加工用トマト収穫体験&手作りケチャップ」の企画を通して、生産者と組合員が交流してきました。汗を流しながらの収穫作業は、大人はもちろん、子どもたちには大変な重労働です。収穫を体験し地産地消について学んだ組合員の声は、生産者への応援になり生産の後押しになります。国産の価値を見直し、愛知の農業を守りたい。コーミはそんな姿勢を伝え、品質や価格に納得してもらえる商品を作り続けています。
◂トマトケチャップ作り(2011年)
収穫体験後はケチャップ作り。トマトピューレに調味料や香辛料を加えて煮込む。
◂加工用トマトの収穫
7月上旬から8月中旬が収穫期。真夏の日差しの中、一つずつ大切に手で収穫する。
◂災害時食講座
工場に運ばれたトマトは、水泡とシャワーの洗浄機できれいに水洗いされる。
ケチャップになるトマトは加工用トマトで、普段私たちが食べている生食用トマトとは種類が違います。夏に採れ過ぎたり、熟し過ぎた生食用トマトで作っていると勘違いされることがありますが、決してそうではありません。
一般的なトマトケチャップは、海外で約6倍に濃縮したトマトペーストを輸入して、日本の工場で加水し製造します。「愛知県産トマト100%トマトケチャップ」は、愛知県で採れた新鮮なトマトを豊橋市の工場でピューレにし、砂糖や酢、香辛料などを加えて作ります。水で薄めないため、トマトのうま味や風味がストレートに分かるケチャップです。
加工用トマトの生産者から、「自分たちが作ったトマトはどうなるの?」と聞かれたことがありました。それまでのケチャップは「国産」とうたい、愛知県産のトマトもこの中に含まれていました。愛知県は加工用トマトの栽培が盛んな土地です。「これではいけない」と2010年に「愛知県産トマト100%トマトケチャップ」を作りました。
「自分たちが作ったトマトがちゃんとケチャップになる」と分かったことで、「多くの方においしいと食べてもらえるトマトを作ろう」と生産者のやりがいになっています。
収穫体験とケチャップ作りの企画は楽しいです。原料の畑まで案内できる調味料はなかなかありません。ぜひ参加していただきたいです。県内産トマトや生産者への理解が深まり、そのおいしさも分かっていただけると思います。
■ 最後にケチャップを上掛けすると、さらいおいしさアップ!おすすめのトッピングは、オリーブの実や目玉焼きです。
■ 少し強めの塩味で。トマトの他に、セロリやにんじんのみじん切りを加えるなど、アレンジOKです。
「加工用トマト」は、果実の色が「生食用トマト」より赤く、この色の違いは、リコペン(リコピン)によるものです。収穫後に追熟させる「生食用トマト」に比べ、品種が違い完熟した果実のみを収穫するためリコペンを2〜3倍多く含みます。「加工用トマト」は、ケチャップやジュースに加工することにより、おいしさが増します。
左:生食用トマトは「ピンク系トマト」、右:加工用トマトは「赤系トマト」とも呼ばれます。
組合員、生産者・メーカー、生協と、産地工場見学や調理実習で多くの交流をしてきました。
ケチャップは子どもにも大人にも人気の調味料。隠し味にも使ってみてね。
「トマトの栽培」と聞くと、支柱を立てて、トマトの茎葉やつるが上に伸びていく姿を想像しますが、加工用トマトは支柱を使わず地面を這わせるように育てます。もともとトマトは地を這うように成長する植物で、加工用トマトは野生種に近いため、自然の姿に近い育て方が向いているそうです。(参考:全国トマト工業会HP)
「愛知県産トマト100%トマトケチャップ」もしかり、愛知県内の畑で地面に這わせて栽培するトマトです。しゃがんで採っていくため収穫はとても大変。生い茂る葉をかき分け、真っ赤に完熟したトマトを一つ一つ手作業で摘んでいきます。7月から8月にかけての真夏の作業になるので、早朝から作業し、いったん休憩したのち、夕方少し涼しくなってからまた作業するそうです。
よく聞かれる質問です。では何が違うのか?もちろん、原料のトマトがすべて愛知県産であることは名前の通りですが、製造工程にも大きな違いがあります。
通常、収穫したトマトはペースト状に加工されます。輸入のトマトを使う場合、トマトペーストはドラム缶に詰め、船で輸送します。その方が一度にたくさんのペーストを運ぶことができるからです。トマトペーストは濃縮されているので、ケチャップに加工するとき、水を混ぜてのばします。少ないトマトペーストでたくさんのケチャップができ、コストが安く済みます。「愛知県産トマト100%トマトケチャップ」は豊橋の工場で、ペーストではなくピューレにするので、新鮮なうちに加工でき、さらに加工時に加水しないため、味が濃く、トマトのうま味を感じることができるのです。
これまでコープあいちでは、ひと夏のうちに何回も組合員のみなさんとトマトの収穫とケチャップ作り体験の交流会を行っていました。担当の馬場さんは、スーツの代わりに毎日麦わら帽子とつなぎの作業着を着ていたそうです。(営業職なのに…)