「高血圧予防のためには減塩が重要」と聞いて
「歳をとって、血圧が上がってきたら減塩しなくっちゃ」と勘違いしている人はいませんか?
実は、若いときこそ塩のとり方に気を付けておく必要があるんですよ。
食塩の話を始める前に、年齢と血圧の関係を知っておきましょう。図1に、その関係を示しました(文献1)。男女とも年齢が上がると血圧が上昇していることが分かります。気を付けたいのは、30歳代、40歳代の若いうちからも、血圧は少しずつ上昇していることです。決して年をとってから急に上がるわけではないのです。
図1.年齢と血圧の関係(文献1):誰でも年齢とともに血圧は上昇します。その上昇は若いうちから起こっていて、年を取ってから急に上がるわけではありません。
次に、食塩摂量と血圧の関係を知りましょう。先ほど説明したように、年とともに血圧は上昇していきますが、その上昇の度合いは食塩摂取量によって変わります。図2(文献2)からは、食塩摂取量が多いほど、1年後に上昇する血圧の値が大きくなっていることが分かります。もし食塩摂取量が1日あたりおよそ7gであれば、1年後に血圧は0.3mmHgくらい上がり、14gであれば血圧は0.7mmHgくらい上がることが読み取れます。
図2.食塩摂取量と1年後の血圧上昇度(文献2):年齢とともに上がる血圧ですが、その上がり具合は、日々の食塩摂取量に影響を受けます。食塩をたくさんとる人ほど、1年後に上がるとされる血圧の値は高くなります。
ここから30年後の血圧を予測してみましょう(図3)。図1の30歳代の男性が日本人男性の1日の食塩摂取量平均値である14g(文献3)の食塩摂取量を30年間続けると、60歳代になったときには黄の丸印まで上昇します。すでに高血圧の範囲に入っています。けれども、7gを30年間続けていれば、緑の丸印でとどまります。まだ正常の範囲内です。
図3.30年後の血圧の変化
血圧を健康に保つためには、若いときから食塩の摂取を抑えた食事をすることが大切です。けれど、日本人の平均的な食塩摂取量は、高血圧を予防するためには少なくとも達成しておきたい目標量を超えています。そこで、多い食塩摂取量を減らす「減塩」よりも、多い人も少ない人も食塩を節約して少なく使う「節塩」がおすすめです。子どものころから、そして大人になってからも、「節塩」活動に取り組んでみてはいかがでしょう。
例)味噌汁を具だくさんにする。麺類のスープの量を少なめにする。
料理にダシをきかす。料理にお酢を使う。など