世の中には健康に関する情報があふれていますね。
中には矛盾するものもあり、いったい何を信じたらよいのか混乱することも少なくありません。
私たちはこれらの情報にどう向き合えばよいのでしょうか。
情報の信頼性をはかるひとつの方法は、その情報の出典(雑誌や本の名前、ページ番号、著者名など)が書かれているかどうかを確認することです。その情報が科学的な根拠に基づいているかの指標になります。それがない「出所不明」の情報は、どの程度信頼できるのかも不明です。
とはいえ、たとえ出典があったとしても、うのみにしてしまうのはちょっと待ってください。その結果は情報発信者に都合のよいように改変されているかもしれません。たとえば、甘い飲料と肥満の関連に関しては、これまでにいろいろな研究で検討されていて、それらの結果をさらにまとめた研究も複数発表されています(文献1)。ところが図1のように、その研究の研究費の支出元によって、正反対の結論が示されていました。甘味飲料の企業からの研究費で行われた場合、6つのうち5つが甘味飲料と肥満の間に関連はないと結論づけていました。一方、企業ではなく、公的な研究費などで行われた場合、12のうち10の研究で甘味飲料は肥満と関連があると結論づけていました。甘味飲料の企業からの研究費をもらった研究者は、甘味飲料企業に不利な情報を出しづらかったのかもしれませんし、全く別の理由があるかもしれません。このような例もあることから、その情報で得をするのは誰かといった視点を持つことも、情報の見きわめには有効なようです。情報の発信者が得をするような情報の場合は、すぐに信用せずに、ほかの発信者の情報と比較してみたほうがよいでしょう。
図1. 甘味飲料と肥満の関連を検討した複数の研究結果のまとめ:甘味飲料企業からの研究費で行われた研究の結果は、公的な研究費で行われた研究の結果と異なり、甘味飲料は肥満と関連がないとの結論が得られていました。
さらに情報の中身までよく吟味して判断したいと思われる方は、図2のフロー(文献2)に従って判断するとよいかもしれません。ヒトを対象にしているか、学会発表か論文報告かなどの基準を使うと、現時点で受け入れられる情報というのは意外と少ないことに気づくかもしれません。
図2. 健康情報の見分け方フロー図(文献2 表6-1改変):ここに示されている基準のみではその情報を受け入れるかを判断するには不足していて、その後さらに研究内容に関する基準に基づいた判断が必要です。受け入れられる情報はこれらの基準をすべて満たしたものだけだ、ということを知っておくだけでも、氾濫する情報に翻弄されずに済むかもしれません。
ぜひ、今回ご紹介した方法を使って、氾濫する健康情報に向き合ってみてください。みなさんが情報を正しく判断し、健康な生活を送るために役立つことでしょう。